第4章 波乱の一泊二日
「くしゅっ……!」
ザーッと音が聞こえる。
いつの間にか降り始めていた雨で体が冷えたようだ。
「寒い……」
両腕をさすって温めようとするが、歯がガチガチいうばかりでいつまで経っても温まらない。
ぼんやりと空を見上げるとかなり時間が経っている事が分かる。
なるべく雨に当たらない位置を選んで座っているが、濡れて冷えた体は次第に熱を帯び始める。
こんな事なら変に悩んで一人でフラフラしなければよかった。
今更後悔しても遅いのに、そう思った。
思い出してみれば、私の人生は後悔ばかりな気がする。
もっと五十嵐君達と話したかった。
もっと東雲さんと仲良くなりたかった。
もっと色んな人と友達になりたかった。
「ゲホッ…ゲホッゲホッ…」
ドサッと地面に倒れて咳き込む。
髪も服もドロドロになったけど、そんな事を気にしている場合じゃなかった。
今、何時なんだろう…。
あとどれ位ここにいればいいんだろう…。
私、こんな所で死んじゃうのかな…。
もう一度、先生に会いたかったな…。
「……_____九条っ!」
声が、聞こえた。
ぼんやりとした視界の中に先生がいる。
「九条!大丈夫かっ!?」
先生はゆっくりと私を起こすと顔に付いた泥を丁寧に払う。
そして、私のおでこに自分のおでこを当てるとハァと息を吐き出した。
「頭…熱い、お前熱あるだろ……」
先生が何を言ってるのかは分かるが、私の頭はまだぼんやりとしたままだった。
「………ゆめ?」
ポツリとそう呟くと先生は小さく笑った。
「バカ、夢じゃねーよ」
その笑顔はすごく優しくて、私の意識はそこで途絶えていた。