第4章 波乱の一泊二日
それからあっという間に月日は経ち、とうとう親睦会の当日となった。
藤城高校に通う生徒達は比較的裕福な家庭が多い。
なので、一般的にいう山の学習という行事は彼等お嬢ちゃん坊ちゃんにとってはしばし苦痛な行事なのだ。
「あーーーーっ!もう、疲れたぁ〜!!」
最初に弱音を吐いたのは東雲さんだった。
同じ班の東雲彩葉(しののめいろは)さんは普段歩く事が殆ど無いらしく、既にギブアップ寸前だった。
「彩葉、もうちょっとだから頑張れって!」
「その台詞、何回目なのよ……!」
友永君の励ましの言葉に東雲さんは睨みで返す。
「東雲さん、少し休憩しますか?」
私は座り込む東雲さんにそう声を掛ける。
「九条さん……!ありがとう…!」
東雲さんは顔を上げて嬉しそうにそう言った。
「お前な、休憩しすぎだって」
友永君は水を飲みながらそう言うと木の根元にどかっと座った。
「あのな隼人、彩葉も九条さんも俺達とは違って女の子なんだから優しく扱えっての」
はぁ、と溜息を吐きながら五十嵐君がそう言うと東雲さんも溜息を吐いた。
「ホント、光輝の言う通りよ!アンタはアタシ達に対して配慮無さすぎ!」
肩でゼィゼィ息をしているが、まだ元気はあるようだ。
クラスメイトの東雲さんは五十嵐君と友永君の幼馴染みらしく、とても気が知れているように見える。
そんな3人を見ていると何だか取り残された様な気持ちになった。
_____って、ダメダメダメ!
友達になって貰っただけでも有難いのに、それ以上の我儘を言うなんて!
「あの、私ちょっとこの辺りを散策して来ますね」
私は気持ちを紛らわす為にみんなから少し離れる事にした。