第1章 森の中で
あの後、走る気力も無く歩いた。そして朝、家に着くとそこにはオウマが壁に寄りかかり死んでいた。
眠るように息を引き取っていたその身体をニルムは家の脇に穴を掘りそこに埋めた。そしてその上に石を並べて墓石とする。
手を合わせ黙祷すること数秒、唐突に涙が流れた。
「あ、あれっ?なんでっ?涙がっ....」
そして何度拭っても止まらない涙が視界をぼかした。
「うっ....ぐ..ふぇ、ううぅ.....」
しばらくしてニルムは立ち上がりぺタンと垂れた獣耳と尻尾が感情を色濃く表す中、泣き腫らした目で空を見上げた。
「....そう言えばおじさんが手紙があるって言ってたっけなぁ.......」
そう呟くとフラフラとした足取りで木造の家に向かい手紙を見つけた。
そして広げ、読む。
『これを読んでいるということは俺は死んだということかな、まあまずは俺の事から話そう。
13年お前と暮らしながらもお前に俺の事を話したことはなかったもんな。
俺は玉狸族で外交官をしていた、そして俺は仙狐族の町に仕事柄よく行ってな。そこでお前の母さん、サクヤさんに会ったんだ、それは綺麗な人でな。だがその人は軍属でな、仲の悪かった豪豹族とよく戦ってただ。
そしてその戦闘の中お前の父親、オウカクに出会った、と、俺にサクヤさんは言ってたよ。戦闘の中で二人は心を通じ合ったんだろうな。だがそれは禁じられた愛だ。なんせ仙狐族と豪豹族はもはや戦争していると言っていいぐらいだったからな。
しかし2人は強かった、なんせ最前線で戦ってるんだからな。そしてこの森まで逃げ、お前が生まれた。
まあすぐに見つかり子供...つまりお前を俺に逃走の途中に預けてそのまま消息を絶った。
.....まあ、こんな感じだ。ニルム、もう書いたがもう一度書く、お前の父親の名前はオウカク、そして母親の名前はサクヤ、だ。』