第2章 ボクはとりあえず熾獅族のところへ行ってみようと思い旅路につく
「それじゃあおにいさん熾月祭でまた会おうねー」
5時になり少々日が暮れてきた中頃、ニルムはそう言って手を振りサエルと別れた。
その際、サエルは「こ、今回の熾月祭は荒れそうだな....」と苦笑いして唇の端をひくつかせていた。
数分歩くと昼食を食べた店が見えた、多分あれだ。
多分、とは店の周りに人が集まっていたからだ。なんとかその隙間から該当する店だとニルムはわかった。
その人だかりの隙間を縫うように進み(背の低さがその際のアドバンテージになった)店に入るとそこはもっと混んでいた、そしてその中にウェイトレス姿のユウハの姿を見つける。
「おーい、ユウハぁ!きたよ~」
無邪気に手を振るその姿に目を回すようにキッチンを出入りしていたユウハが「ハッ」と顔を上げた。
「あっ!ニルム!今はきちゃダメ!」
何故か焦った様子で言うユウハ。
戸口にいたニルムは「え?」と首と尻尾を傾けたのと同時に店の内外にいた客の視線がニルムに注がれた。
「な、なにっ....?」
客がヒソヒソと語ってはこっちを見てを繰り返す、そしてある男の客がニルムに声をかけた。
「あ、あんたが豪豹族の少年か...?」
「え、あ、うん」
その一言に客たちが「マジかよ!?」とか「ちっちゃくて可愛い~♡」とか「豪豹族ってもっと厳しいもんだと思ってた....」としゃべり出した。否、喚き出した。
「な、なあ!握手してくれよ!」
「私は抱きつかせてー!!」
その迫力にニルムは数歩後退した。
そして更に距離を詰めてくる客達。
そんな絶体絶命?のニルムに救いの手がおりた。
「ああもう!マスター!もう五時ですしおりますね!さっニルム、こっち来て」
そう厨房に向かって叫んだユウハは人だかりの中を強引に進み、ニルムの手を取って店から出ていった。
その際に人だかりに目を回して「あうあうあぁ」とニルムが言っていたのは御愛嬌か。
ニルムは心の中で、門番さんが豪豹族は目立つって言ってたのはこういうことかあ、と目を回しながら1人納得した。