第2章 ボクはとりあえず熾獅族のところへ行ってみようと思い旅路につく
結果から言うと、ニルムの圧勝だった。
正確に言うと瞬殺、になりそうだけど。
最初に動いたのは熾獅族の青年だった。
地を蹴った熾獅族の青年はニルムにラッシュを繰り出すが、その全ての拳と蹴りをニルムは見切り、ひらりひらりと躱す。
「糞がッ!ちょこまかとッ!」
青年はそう叫び大振りの拳を振ったその瞬間、ニルムは一気に懐に入り肉薄、かろうじてそこまでの動作は見えた熾獅族の青年は迎撃しようと肘鉄を繰り出す。
しかしそこにニルムの影はなかった。
「こっちだよおにいさん」
青年の背後で宙に浮かびながらニルムがそう呟いた瞬間、青年の視界がブラックアウトした。
「ふう、なんとか勝てたなぁ。良かった良かった」
ニルムはそう言って服についた埃を払い、青年方を見る。
熾獅族の青年はニルムの放った回し蹴りによって数m離れた白レンガの外壁の残骸の山に埋もれていた。
ひょこひょことした足取りで青年に近づくニルム。そして上に乗っていた残骸をどける。
「ほら、おにいさん立って立ってってば、大通りへの道のりを教えてってばぁ~」
そう言って両肩を持ち、グラグラと揺らす。しかし青年は目を回しており一向に起きる気配は無かった。
「ん~、どうしよう...あ、デコピンでもしてみよっと」
そして「パチン!」と景気のいい音が真っ白な道に響いた。
しかしどうやらデコピンをしたのは正解だったようで青年は「あつつつ...」と言いながら起きた。
「つつ...糞、負けたのか....」
「そうだよ!だから速く大通りへの道に案内してってばあ!」
そう言いニルムは怒気をあらわにするが、その表情は可愛いとしか形容できない。
「チッ...わーたよ、ついてこい」
熾獅族の青年はよろよろと最初は立ち上がったがすぐに然とした足取りに戻って道を進んだ。
「やったあ!はやくはやく!」
そう言ってはにかみながら青年の裾を引っ張るニルム。
青年にはその笑顔はちょっと眩しかった。