第2章 ボクはとりあえず熾獅族のところへ行ってみようと思い旅路につく
ビミョーな空気、とはいわゆる視線のことだった。その視線とは主に4つ、『好奇』と『興味』、そして『驚き』に『敵意』だった。
しかしこの場合『敵意』には『嫉妬』や『羨み』などの気持ちが混ざっていたためニルムは少々いごごちの悪さを感じた。
そんな風にニルムが思い、席を立とうとすると運悪くか偶然か熾獅族のウェイトレスの少女がまた話しかけてきた。
「じゃあ君は今月の熾月祭に参加するの!?」
「熾月祭?」
街にはそんなものがあるのかぁ、と1人思っている所をウェイトレスがまた話しかけてきた。
「熾月祭をしらないの?結構有名だと思うんだけどねぇ?」
「そうなの?じゃあそのし、しげつさい?てどんなのなの?」
その答えにウェイトレスの少女が「熾月祭とは....」と続けようとするところを今まで静かにしていた周りの客の一人が割り込んで答えた。
「熾月祭とはな豪豹族の坊主!街中がフィールドのバトルロワイヤルさッ!!」
そしてまた1人。
「そうだぞ坊主!熾獅族の市民はな特定の職業や子供を除いて男も女も殆んどが出場すんだぜッ!!」
そしてその波はどんどん波紋していきついには店の客の殆んどがニルムへの熾月祭の説明をしていた。
その中には同じ情報などや強い熾獅族の獣人の話などもあったがニルムはその勢いに戸惑うばかりで全く聞けなかった。
そしてもう少しで人波にニルムが消えそうになるところで救いの手が。
「こらッ!!困ってるでしょうがッ!!!ほら散って散って!」
客もそう言われ気づいたようで続々と客席に戻って行った。戻る際に何人か「今月の熾月祭は面白くなりそうだ!」などと話しているのが聞こえたがニルムは無視した。
「大丈夫?君?ごめんねえ、悪い人たちじゃないんだよ?」
「う、うん。わかってるよ、ただ、ね、勢いが凄くて....」
そう言うとウェイトレスの少女は銀のトレイで口を隠して笑い出した。それにはニルムもしどろもどろするしか無く、客観的に言うとキョドった。
「ハハハっ...あ、ごめんね!豪豹族なのに結構小心者みたいなセリフだったからさ」
「豪豹族でも誰だってあの人波にならああなるよ....」
ニルムは頬を膨らまし、拗ねて言った。
その仕草は十分「可愛い」と言えるもので彼女の豪豹族のイメージとはかけ離れていてウェイトレスの少女はまた吹き出しそうになった。