第1章 おとことおんなとこどもとおとな
「小島様。」
マスターがこっちに戻って来て、あたしの背筋が思わず伸びる。
「お待たせしました。こちら、バースデープレゼントになります。」
へぇー、バースデープレゼントなんてカクテルがあるんだ。おっしゃれー。
そんな事を呑気に考えていたあたしは、出て来たカクテルグラスに釘付けになる。
「・・・え?」
どんな綺麗な色のカクテルが出て来るかと思っていたのに、グラスには何も入っていなかった。
あたしの目がおかしくなっちゃった?それともあたし、騙されてる?
「ん?」
・・・いや、何か入っている?
「これって・・・。」
目が丸くなった、というのはこの事だろう。
カクテルグラスの中には、キラリと輝く指輪が入っていた。
「え?ちょっと・・・。」
マスターを見上げる。お茶目なマスターは微笑みを称えながら、悟さんを指し示した。
「え?」
隣の悟さんを見上げる。悟さんはしてやったりと言わんばかりに笑いながら、グラスの指輪を指し示した。
「ほら。」
言われて「付けてみろ。」と解釈したあたしは、恐る恐る指輪を手に取りじっくり眺める。シンプルだけど大きめのダイヤが1粒ついている上品なデザイン。良いものである事が一目で分かった。
「これ・・・悟さんがあたしに?」
「驚いた?」
にこにこと笑う悟さんの顔は、まさにいたずらっ子そのもの。
悟さんに手を差し出されて、促されるまま指輪を渡した。
受け取った悟さんはあたしの左手をとって、そのまま薬指に指輪をはめる。
「あれ?」
手を下に向けたら落としそうなほど、指輪はあたしの指には少し大きかった。
「サイズ間違えてたか。ごめんな。」
慌てた様子で謝る悟さん。本当に申し訳なさそう。
・・・そんな事、どうでもいいのに。