第12章 傍にいたい
椅子に座って、彼女の次の言葉を待つ
沈黙が二人を包み込んだ
はちらちらと俺の顔を見る
これはの癖だ
本当に言いたいことがあると、相手の顔を何度も見る
変わっていないその癖に、俺は思わず口を緩めた
「言いたいことがあるんだろ?言えよ」
優しく、彼女の頬に触れる
はくすぐったそうに、目を細めて、そして
『私、怖かったんだ』
うつむいたまま、そう言った
『一くんに嫌われるのが怖かった。だから私から嫌おうって思った。でも、できなかった』
「……なんで、嫌おうって思ったんだよ」
『私、障がい者で、これから先一くんを苦しめるし迷惑をかける』
そしてはこう言った
以前テレビを見ていた時、「あなたの恋人がもし障がい者になったらあなたはどうしますか」という番組が映っていたらしい
インタビューされていたのは大体10代~20代の若い世代で
ほとんどの人が「別れる」と答えていたらしい
その理由の多くが「デートしたときなど外で注目あびるから恥ずかしい」「傍にいるのが嫌だ」と言った回答だったそうだ
『恥ずかしいでしょ?こんな足のない私と一緒にデートできる?』
大量の涙を流しながら彼女は俺を見る
俺は真っ直ぐに彼女を見つめ返した