第12章 傍にいたい
火曜日
俺は、及川に頼んで部活を休んだ
及川は笑って、「早く行きなよ」と俺の背中を押してくれた
今日の昼、及川たちと飯を食ってる時、昨日のことを聞いた
詳しいことはから聞けと言われたから、おおざっぱなことしかわからないけど
でも、会いにいかないと駄目だと思った
病室の扉の前に立ち、ノックをする
中から聞こえる声に、心臓がうるさいくらい脈を打つ
扉を開けると、目が合った
前より、少しだけ顔色が良くて回復しているんだなって思って、嬉しくなる
それと同時に、緊張もしていた
会いたいとは思った
会ったらいっぱい話そうと思った
でも、実際会ってみて、何を話せばいいかわからなくなった
その場に立ちつくして、ただお互いに見つめ合う
先に目をそらしたのはだった
そしてぽつりと
『ごめんね……』
それは何に対して謝っているのだろう
「別れよう」と言ったことに対してか
それとも「もう付き合えない」という意味でだろうか
及川はが会いたがってるとしか言わなかったが
これを言うために会いたかったということだろうか
よくわからなくて、俺はただ無言で彼女を見つめた
『……ねえ一くん』
こっちにきて、とはベッドわきの椅子を指さした
俺は重い足をゆっくりと前へ動かした