第23章 Hello,Good by Day
出発のベルが鳴る。
電車がゆっくりと走り出す。
と出会って、たくさんの、ありったけの倖せをもらった。
初めて聞かされた「許嫁」の存在。
最初は、意味が分からなかった。
そもそも自体もどういう人かをわかっていなかった。
だけど同じクラスだって知って、それから付き合い始めた。
それこそ、一か月付き合って好意が生まれなかったら許嫁の件は無し、と言う条件付きで。
そして徐々に彼女に惚れていった。
彼女の強さが、弱さが、全てが愛おしくなった。
事故で両足と子宮を失って、いじめに遭って、
それでも彼女はもがいて、あがいて、必死に生きている。
俺の大好きな人。
この3年間、いろんなことがあった。
それはお世辞にも美しい思い出とは言えない。
それでも、俺の胸の深いところのこびりついている。
『もう少しで着くね』
「ああ」
移り変わる景色。
思い出もこの景色のように移り変わっていくのだろうか。
「はじめまして」と「さようなら」を繰り返していくうちに、「高校3年間」は思い出となって薄れていくのだろうか。
そんなことをに言ったら、彼女は笑って
『そうかもしれないね。でも、思い出となって薄れたとしても、みんながいたっていう記憶があれば十分なんじゃないかな』
「そういうもんか?」
『うん。一緒にみた景色は忘れたとしても一緒にいたってことは忘れなきゃいいんだよ。これ、私論!』
白い歯を見せては笑った。
その笑顔に俺も笑みをこぼす。
電車が駅に止まる。
扉が開く。
の車いすを押して、
駅のホームへと降りた。
fin.