第11章 本音
「岩泉、お前荒れすぎ。別れてむしゃくしゃするのはわかるけど、部活にまで持ち込むな」
部活後の帰りに俺とマッキー、松っつん、岩ちゃんでファミレスに寄った
「後輩共がビビってた」
ジュース片手に、松っつんが向かいに座る岩ちゃんに投げかける
岩ちゃんは眉間に皺をよせ
「……悪ぃ」
何とも弱弱しい声で謝ってきた
俺ら三人、らしくない彼の姿に深い息を吐いた
だいぶ精神的にキてるらしい
「ねえ、岩ちゃん。何があったの。別れるような事でもした?」
「……わかんねえんだ」
「わかんない?」
ポツリと話し出す岩ちゃんの言葉を俺らはただ聞いていた
「別れようって言われた瞬間、息ができなくなった。俺が何かして、それが嫌で別れるってんなら納得した。でも、俺は何かした覚えがないんだ」
グラスの中に入っている氷をストローでくるくると回して遊ぶ岩ちゃん
こんな岩ちゃん、初めて見たかもしれない
「自信がない……」
眉間のしわが濃くなる
その目にはうっすらと涙がたまっているようにも見えた
「俺、初めて幻肢痛ってのを見たんだよ」
「幻肢痛?」
聞きなれない単語に首をかしげたのはマッキーだった
幻肢痛ってあれでしょ?
ない筈の部位があるように感じる現象
ちゃん、脚を切断したっていうからきっとこの現象に悩まされているんだろう