第11章 本音
及川side
最近、岩ちゃんが荒れている
話しかければ、何も言わず睨みつけられる
部活だって、普段はしないようなミスを連発している
理由は至って簡単なもの
ちゃんと別れたらしい
いつ別れたのかは定かではないが、荒れ始めた日だとするならかれこれ2週間は経っている
ちゃんと別れたのは学年全体が知っている
最初こそ、みんな岩ちゃんに群がって詳細を聞き出そうとしていたが、
あまりのどす黒いオーラによって詮索する者は今は誰一人としていない
何回か病院に行って会いに行ったことがあるらしいが
面会を拒絶されたと、俺とマッキー、そして松っつんだけに話してくれた
それだけだ
ドゴッ
「くそっ!」
この日も、岩ちゃんはミスをしていた
岩ちゃんが打ったスパイクは、コートに落ちることなく
壁に強打される
「岩ちゃん、力み過ぎ。もっと肩の力抜かなきゃ」
「わかってる!」
もう一本!という彼に俺はトスを上げる
今度はコートに落ちたが、それでも荒れていることは見ていてわかる
本当はこんな状態で練習なんかしちゃダメなんだけど、
岩ちゃんはそれすら拒んだ
たぶん、何かしていないといらないことを考えてしまうんだろう
でも、岩ちゃん
俺はそんな岩ちゃんの姿、見たくないよ
自分ひとり抱え込まないで、俺に相談しろよ
幼馴染だろ
少しは俺を頼ってくれよ
あの時、岩ちゃんが俺を救ってくれたように
今度は俺が岩ちゃんの力になりたいんだよ