第10章 一言
「怖いところ見せちゃったね」
「いや……はい」
「でも、ああしないとあの子はずっと苦痛を感じるから。ああするしかないのよ」
それはわかる
さっきのはただ、あまりにも衝撃的すぎた
「ちゃんとした治療法もないから、気休め程度の鎮痛剤を打つしかない。でも効果なんてほとんどないわ」
その言葉に唇を噛みしめた
さっき、俺は恐怖を感じた
看護師の対応にもだが
自分自身にもだ
のあの姿をみたら、支えられるのか不安になった
実際俺は何もできなかった
またが幻肢痛で苦しめられた時、俺はあいつを支えられるのか?
そして一瞬だけ、頭の中にくだらない一言が浮上した
そう思った瞬間、自分を殴りたくなった
その程度の男だったのか、と思った
最低だ、俺って言う男は
病室に戻ると、いまだに気を失って寝ているがいて、その髪に触れた
すると、小さな声を漏らしながらゆっくりと目を開けた
俺の姿を見ると、顔をゆがめ腕を伸ばしてきた
俺の頬に貼ってある絆創膏に触れると
『これ、私が傷つけたんだよね。ごめんね……』
「気にすんな。それよりどうだ、脚は」
『今は、痛くないよ。さっきは本当に痛かった。死ぬかと思った』
「でも、生きてる」
『うん、よかった』
へにゃりと笑う
その笑顔は今にも泣き出しそうで