第10章 一言
次の日もその次の日も俺は病院に行った
他愛もない話をした
の声が聴けるだけで十分で、会えるだけで倖せだった
滞在時間は10分くらい
短いけど、構わない
一生会えないよりはずっとずっとマシだ
月曜日
この日も病院に行った
扉を開ければ、そこにはベッドにうずくまって、荒い息で大量の汗をかいて苦しんでいるの姿があった
「!?」
駆け寄ると、ない筈の脚を抑えていた
これが、幻肢痛……
「、聞こえるか?脚、痛えのか?」
『はーっ、ぅぐ…!!うあああっ!!』
余りの痛さには暴れだす
その時、振り回していた手が俺の顔に当たった
長く伸びた爪が、頬をかすめる
血が、流れ落ちた
病室に看護師たちが数人やってきて、を取り押さえて、鎮痛剤を打った
その光景に俺は、怖くなった
が、じゃない
取りおさえる看護師たちがだ
「静かにして!!」「暴れないで!」「そこ、ちゃんと抑えて!!」
まるで、小さな戦場のようだった
鎮痛剤を打って落ち着きを取り戻したはそのまま気を失った
俺は、何もできず病室の隅に立っていた
一人の看護師が俺の所に来る
反射的に肩が揺れる
「怪我しちゃったね。消毒するからこっち来て」
その背中に着いて行き、頬を消毒して絆創膏を貼った