第22章 阿吽の呼吸
『じゃあまた明日ね』
「ああ。また明日」
彼女を家に送り届けて俺は自分の家に帰った。
一人になった帰り道。
頭の中は嫌でも春高予選のことを思いだしてしまう。
あの時、あのスパイクさえ決めてさえいれば……。
そしたら全国に行けたかもしれないのに。
すると、家の近くで及川の姿を見つけた。
バレー部のジャージにランニングシューズ。
今から走りに行くのか、あいつは。
「及川」
気が付いたら名前を呼んでいた。
及川は俺の声に振り向く。
お互いに見つめ合い無言の時間が過ぎる。
「ちょっと待ってろ」
俺は一言そう言って、家の中に入り自分の部屋に行き着替える。
ジャージを着て、ランニングシューズを履いて外に出る。
そんな俺の姿を見て及川は笑った。
「岩ちゃんはそういう奴だと思ったよ」
そういう奴ってどういう奴だよ。
及川の横に並び、走り出す。
秋の風が二人の身体を包み込む。
体が熱くて、冷たい風は気持ちがよかった。
「岩ちゃん」
「なんだ」
「俺たちずっと一緒だったじゃん」
「おう」
「今日さ、女の子たちに俺と岩ちゃんはこれから先もずっと一緒にいるもんだと思ってたって言われた」
「それ、にも言われた」
そう言うと、及川は「ははは」と笑った。
どいつもこいつも考えていることは同じらしい。
「岩ちゃん、また明日ね。受験頑張りなよ」
「それはお前もだろうが」
お互いに拳をぶつけた。
手から腕へ伝わる痛みを感じながら、俺達は家の中へ入った。
お互いの道を歩んで、離れ離れになってしまうけど
でもだからと言って、今まで築き上げてきた絆がなくなるわけじゃない。
俺もあいつもバレーはやめない。
敗けたまま終われるわけがない。
「似た者同士、てか」
俺は思わず笑ってしまった。
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