第22章 阿吽の呼吸
及川とは小学生からの付き合いだ。
だからお互いのいいところも悪いところも嫌っていうほど知っている。
ずっと考えていたことがある。
俺達はいつまでこの関係でいられるだろうと。
『ずっと一緒だと思っていた。一くんと及川くんは』
春高予選が終わり、引退した俺達3年は受験モードへと移った。
放課後の図書室でから勉強を教わっていた時、彼女がそう言った。
俺は動かしていたシャーペンを止める。
「そんなわけないだろ」
なんてそっけないことを言ってみる。
はクスリと笑ってそれ以降何も言ってこなかった。
"阿吽の呼吸"
いつからか俺と及川はそう言われるようになった。
小学生からずっと一緒だった。
だから、別々の道を行くなんてことは第三者からしたら多少なりとも驚くことなのかもしれない。
でも、俺たちからしたら"こうなる日"はいつかやってくるとわかっていた。
『でも、少し安心した』
下校時刻、彼女の吐いた言葉に首をかしげる。
手押しの車いすから電動車いすを新調してもらった。
彼女は、まだ慣れない手つきで電動車いすを動かす。
「安心したってどういうことだよ」
『だってなんか、一くんも及川くんもお互いに依存してたから。すごく心配だったの』
依存……?
俺が及川に?
『気づいてないでしょ』
「……おう」
『ふふっ』