第19章 いじめ
誰も使っていない、教室に入り、鍵をかける
たいした距離を走っていないのに、息が切れた
でも、そんなことはどうでもいい
俺はと向き合って、乱暴に言葉を投げた
「なぁ、なんで相談しねえの?なんで黙ってなきゃいけねえの?見過ごせるわけないだろ?」
『………』
は何も言わない
俺の質問に何一つ答えてはいないけど、俺も今自分を抑えられる気がしない
「お前の周りってそんなに信用ない奴らばかりか?あぁ、そうだろうな。俺はお前がいじめられているのを知りながら何もしなかったんだから、信用できないよな。でもさ、それでもさ、せめてお前の両親とか、岩泉だけでもいいから信用してやれよ。お前の許嫁だろ?将来苦しみとか悲しみとか分かち合うんだろ?だったらさ、もう少し頼ってもいいんじゃねえの?」
早口で言った
頭で考えるより、言葉が率先して出てきた
顔が熱い
血の巡りが速い
体中に酸素が足りてない
興奮しているのがわかる
自分を落ち着かせるために、何度も息を吐いた
それでもは何も言わない
すげえイライラする
何でこいつ何も言わねえの?
そのとき俺は一つの考えが頭をよぎった
もしかしたらこいつは"言わない"のでなはく"言えない"のではないだろうか
俺は、それを口にした
するとここで初めての反応があった
肩を揺らし、俺の顔を見る
それだけで図星だってわかった
「……なんで言えねえの?」
こいつのことだ
きっと「迷惑をかけたくない」とかそんなバカなことを考えているんだろう
そんなことを言ったら俺はお決まりのセリフを言ってやる
迷惑なんかじゃないよ―――――――――――――――
『恥ずかしい、から』