第13章 俺の好きな人
そして二人は晴れて恋人兼許嫁となって、学校中有名なカップルとなった
そのことを二人は知らないが
「松っつんさ、本当にこれでいいの?」
「言いも何も、邪魔する気さえおきねえよ。あんなラブラブじゃ」
晴れた昼休み、中庭で購買で買ったパンを頬張りながら
俺、及川、花巻の三人は談笑する
「これでよかったかもしんないとも思ってる」
「え?」
「あいつが幸せそうに笑ってるなら、それでいいかなって」
「きれいごとだな」
そう吐き捨てた花巻をにらむ
きれいごと言ってないと、どうすることもできないんだよ
本当は俺が、笑わせてあげたかった
でも、俺じゃだめなんだよ
大分、精神的に参ってる俺に
及川と花巻は何を思ったのかは知らないが、飲みかけのジュースを渡してきた
関節キスとか、そんなの意識したわけではないが
なぜか無性に腹が立って、その中身を全部地面にぶちまけた
俺の気持ちはだんだん薄れていくものだと思っていたが
薄れる気配は一向にやってこない
根っこのように俺の心臓に張り付いたまま、そこに存在している
いっそのこと、根っこごと心臓を取り出せば楽になるかもしれないと思ったが
そんな勇気は俺にはなかった