第13章 俺の好きな人
岩泉をみるあいつの瞳が、俺を見てくれたら、なんて何度思ったことだろう
何度思ったところで、あいつの瞳は俺に向けられることなく
進級した
2年になってクラス替え
俺とあいつはクラスが別になった
そのかわり岩泉とあいつは同じクラスとなっていて
俺はこのとき、神様を恨んだ
神様なんてこの世のどこにもいねえよ、なんて吐き捨てたっけ
『クラス別れたね。なんか寂しい。松川くんといるとすごく楽しかったのに』
俺もお前といるとすごく楽しいよ
でも俺とお前の楽しいは違うんだろうな
「でもよかったんじゃねえの?岩泉と同じクラスじゃん」
『……うん』
嬉しそうに頬を染めちゃって、かわいいんじゃねえの?
頭をくしゃりとなでる
抱きしめてえな……
そして、進級して一週間後
あいつがあわてたように、俺の腕を引っ張り人気のない場所まで連れて行く
何事だよ、と思って眉をひそめる
すると彼女の口からとんでもない単語が飛び出した
『私と岩泉君、許嫁みたいなの!!』
言っている意味がよくわからなかった
こいつは何夢見たこと言ってんの?
もしかして夢か、これ?
『昨日、私のお父さんがね言ってきたの。許嫁だって。ねぇ、どう思う!?』
「……どう思うって言われても」
すげえ腹立つ
嫉妬心がぐつぐつだよ
何が許嫁だ
そんなの俺に勝ち目がないって言っているようなもんじゃん