第13章 Tell me the right way!!(及川徹)
「で?」
スマホのタイマーの残り時間を確認してから、及川が首を傾げて聞いてきた。「なまえちゃんの模試が悪いんだっけ?」
「そうそう!そうなんですよ!」
忘れるところだった、と私もぽん、と両手を打つ。「聞いておくれよ、私の悩みを!」
そして身を乗り出して及川に語り始めた。
まずなんで模試の結果が悪いのかってそれは自分でも原因は分かってるんだよ。勉強していないから。いや、勉強のしかたがわからないんだよ。部活が終わるじゃん?家に帰るじゃん?さぁ、やるぞ!って机に向かうじゃん?とりあえず、苦手な化学は置いといて英語からっしょ?だけどどっから手をつけていいかわからないのよ。単語?読解?リスニング?って迷ってたらお腹が空くでしょ?エネルギーがないと脳も働かないから、だから夜食を食べるでしょ?そしたらお腹いっぱいになって眠くなる。そんで、1時間だけって仮眠を取ったら、気付いたら朝になってるんだよ。ホント、目が覚めた瞬間死にたくなるよね。
「もう嫌だ!自己嫌悪から始まる1日はうんざりです!」
私の気持ち分かってくれる!?と顔を上げれば、苦々しく笑った及川と目が合った。
「なまえちゃんは、目の前の快楽に弱すぎる」
「そう言う及川は、イケメンでバレー部のくせに努力ができるから成績が良い」
「うへー、ありがとうございます」
「褒めてないです」
そっぽを向いたら「特別なことなんてなにもしてないんだけど」と及川が肩をすくめた。
世の中には勉強が趣味という変人がいる。復習せずに、60分間の授業だけで理解して記憶ができる天才がいる。
「俺にはそんな才能ないから、地道にコツコツやってるだけです」
「努力の天才じゃんか。信じられない!」
「難しいことじゃないよ。なまえちゃんは、勉強法をあれこれ試してブレてるだけでしょ。今使ってる単語帳は何冊目?」
尋ねられて、う、と答えに詰まる。数字を答える代わりに、だって、と言い訳をした。「だって、他の人が使ってる物の方が良さ気に見えるんだもん」