第12章 1+2+3+4+5=(国見英)
「見て!塩キャラメル味だって!」
「マジ?」
国見が大きく身を乗り出すと、机がガタンと音を立てた。
「これ一緒に食べようよ!国見くん、塩キャラメル好きなんだよね?」
青い包装の箱を掲げて、興奮ぎみに話すなまえに、え?と国見は目を見開いた。
「俺、みょうじにそんなこと言ったっけ?」
「言っ…………ってない、かも。ごめん」
早口で謝るなまえの顔が、みるみる真っ赤に染まっていく。「けどいっつも食べてるから、好きなのかなー……って」
「確かに好きだけど……いつも、って?」
「あっ、いつも見てるっていう意味じゃないよ!?時々!部活帰りとかに食べてるとこ見かけるだけで………………あっ!」
「部活帰り?」
一体どこから見られてたんだ?
驚く国見の顔から視線を逸らして、墓穴を掘ったなまえはわたわたと包装紙を破き始めた。
「もうこの話はおしまい!食べよ!」
はい!と小さな箱を差し出される。淡黄色の三角形が、折り重なって敷き詰まっていた。国見が1つ手に取ると、柔らかい生地がへにゃりと垂れた。
匂いを嗅いでみると、微かに甘い香りがする。キャラメル……うん、キャラメル、だと思う。
なまえを見ると、彼女は早くも頬張っていた。おいしいよ、と言われるがまま国見も口に含むと、甘じょっぱい味が舌の上に広がっていく。
「どう?」
「うん……まぁおいしいと思う」
「ね、見て、こんなのも入ってた」
まだ少し頬が紅潮している彼女が、次に紙袋から取り出したのは、同じく薄い黄白色の、正方形のーーー
「なにこれ?」
「生八ツ橋の皮だけだって」
「そんなのもあるんだ……」
「うちの部員って、みんな普通じゃないのが好きだから」
「すぐネタに走るんだよね」となまえが可愛い声を出したので「だからみょうじも、変なお守り作ってんだ?」と国見も口を滑らした。