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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第10章 ときめきのピストルを空へと向けて(澤村大地)



大地にも、机に座って授業を受けた3年間があって、憧れていた人も、きっといたんだろうな。



もう付き合い初めて何年も経つはずなのに、そのことを考えると、いつも胸がずきりと痛む。


この人はもう私のもののはずなのに、昔の彼が、私以外に想い焦がれた人がいる。そう考えるだけで心がざわめく。息苦しくなる。

けれどその渦巻く混沌によく目を凝らすと、実は奥深くに愛しさに近い感情があることを知っている。だから私は、いつも自棄にならずにすんでいる。




かく言う私も、かつて好きだった人がいたのだ。今でもふとした瞬間、頭をよぎる名前がある。

もうずいぶん前に吹っ切れたつもりでいるんだけれど、時々夢の中に現れる人。


昔の記憶の姿のままで、勝手に目の前に現れて、勝手にぱちんと消えていく人。


そうやってベッドの中で目覚めた私は、もう高校生じゃなくなった自分に戻って、隣で眠る大地の寝顔に、あぁ、そうだった、と思い出す。


確かにあの人のことは好きだった。けど、もういいんだ、って、あたたかい感情を取り戻す。









知らない名前がコートの上を飛び交っていた。シューズと床が擦れる音。バレーボールが宙に舞う。重力に反して人が跳ぶ。体育館に響く、力強いスパイクの乾いた音。


コートを照らす眩しい白色ライトの光が滲んで、虹色の輪がかかって見えた。あれ、と思ったときには、涙が頬にこぼれていた。



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