第1章 まるでオーストラリアのサンタみたいに(赤葦京治)
「いつも持ち歩いてるんですか、アメ」
「いつもじゃないけど、たまにね。遠出するときとか」
「面白いですね」
本当に保護者みたいだ。
そう言って彼は笑った。赤葦くんの笑った顔は子供っぽくて、薄く開いた唇から白い息が漏れていて、きゅっ、と細くなる目元に、あぁ、素敵な人なんだなぁ、と、店先から流れてくるジングルベルを聞きながら私は考えていた。
街はクリスマスムード一色で、赤と緑そして銀色と楽しい音楽で溢れている。道行く幸せそうなカップルに自然と気持ちが奪われる。あぁ、もしかして、私と彼って恋人同士に見えてるのかな?ちゃんとデートになってるっぽい?
「世の中、クリスマスばっかりですね」
ここでも思考が一致したのか、歩きながら赤葦くんが呟いた。そうだね、特にここはさ、夜になるとイルミネーションが綺麗だよね。そう返すと、あぁ、と思い出したかのように彼が歩道の木を見上げた。「ほんとだ。電飾が、」
「うん、電飾が」
「汚いですね」
「えぇっ!?」
まさかその感想が出るとは思わなかった。確かに太陽が出ている昼間の今は、木に巻きつけられたコードが目につく。細い刺のような電球が無数に生えていて、まるで茨が絡みついているようで痛々しい。
でも、それにしたって、
「赤葦くんて、イルミネーションとか見に行かないタイプ?」
「そうかもしれません。クリスマスとか、正直興味ないですし」
「世の中の浮かれっぷりに呆れちゃう?」
いや、そこまでではないですけど……。言い淀んで赤葦くんは鼻の頭を軽く触った。そのバツの悪そうな仕草さえなんだか可愛らしい。やっと見つけた私との違い。彼はイベントごとには関心が薄い。
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