第6章 視点を変えて見てみよう【3.拡大】(青城3年)
「俺か」
「キミだ」
「よっしゃ」
軽く咳払いをした花巻に、なまえが同様にレンズを隠して合図を出した。キュー!と同時に画面の中に映るのは、「あー、だりー」と首の後ろに手を回す花巻の姿。
「っべぇわー、昨日2時間しか寝てねーからやべぇわマぁジだりぃわこれ。レッドブル1本じゃもう効かねー身体になっちまったなァ」
「もう1本キメてくっかぁ」と気怠げに首を回す花巻を見て、ほほう、となまえが感嘆の声を漏らした。
「等身大の中学二年生ですね。これはポイントが高そうです。いかがですか、松川さん?」
「非常に自然で良いですね。大人な自分をアピールしたい、クラスに1人はいるタイプの中二男子です。エナジードリンクの小技を使ってアブない俺をアピールしつつ、お節介な女子に心配してもらえるおまけつきです」
「こういうタイプはアレですよね。サブカル系を併発するタイプですよね。人とは違う趣向を持とうとする余り、理解できない洋楽を聞いたり『風とともに去りぬ』とか読んじゃったりするタイプですよね」
「中学生には割りとモテるんですよねこれが。この自然な演技は過去に似たようなことしてたっていう、経験からくるアレなんですかね」
「ちげーよ」という花巻の突っ込みを華麗にスルーして、「はーい最後は及川だよさっさとして」となまえが呼びかけた。
「みんなお待たせ!及川さんだよっ?」
「お前にゃ無理だろ」
「ヒドいなマッキー!俺だってやればできます!」
「いやお前、なんでさっき死体役やらされてたか自覚してるか?演技下手くそなんだよお前」
「キィー!じゃあ黙って見てて!今から俺、本気出します」