第6章 視点を変えて見てみよう【3.拡大】(青城3年)
「さぁ、ではトップバッターは岩泉さん!」
「はぁ?俺かよ!?」
なまえがスマホを向けると、壁のスクリーンにも岩泉の焦った顔が映し出される。
「張り切っていってみよー!」
「ちょっと待て!何をどうしたらいいんだ!?」
「中二病になってください!」
「ンなこと急に言われても……!」
つべこべ言わない!となまえがカメラレンズを右手で覆った。「さぁ皆様前方のスクリーンにご注目!岩泉さん準備はいいですね?3、2……」
「なっ……!?おい!ちょっと待っ」
「イチ!はい、キュー!」
パッ、となまえの手が外れて、再びスクリーンに光が戻った。
その巨大な画面に映し出された岩泉が、うっ、と呻いて右目を押さえる。
「古傷がいやに疼くな……!?近付いてるのか……『裁きの刻<トキ>』が……!」
「あーっとこれは………!なるほどなるほどー!」
割りとノリノリだった岩泉を見て「まずは定番で攻めてきましたね解説の松川さぁん!」となまえが興奮ぎみに俺の方を振り返った。
「そうですね。これはスタンダードな邪気眼系です」
と、俺も割りとノリノリで適当に説明をする。「自分には秘めた能力があると思い込んでしまう系の、秘密結社や魔法陣なんて言葉に憧れを覚えるタイプの中二病です」
「なるほどー。わざわざルビを使うところまで典型的ってわけですね。あらら?岩泉選手、何か異変が起こったようです」
「顔を覆ったままうずくまっていますね。古傷が疼くんでしょうか」
「むしろいま現在の彼の心に深い傷を負ってしまったようですね。主に羞恥心的な意味で」
「アフターケアは後にして、次行きましょうか」
「そうですね」
さらっと流したなまえが「さぁお次はお花巻さん!」とスマホを向ける。