第1章 まるでオーストラリアのサンタみたいに(赤葦京治)
「こっちがなまえ。小中高って何故かずっと同じクラスのヤツ。そんで、こっちが後輩の赤葦」
そのざっくりとした説明に私達は、えっ、と驚いて顔を見合わせた。
「小さい頃からずっと世話係をやらされてるっていう、あのなまえさんですか?」
「この木兎に四六時中付きまとわれてるっていう、あの赤葦くんですか?」
そして少しの間見つめ合った後、2人同時に頭を下げた。
「いつもお話伺ってます。うちの主将がすみません」
「いえいえそんなこちらこそ。木兎の馬鹿がご迷惑おかけしてます」
「保護者かよ」
ぺこぺこしあう私達を見て呟いたのは3年2組の猿杙大和。
かくして世話焼き同士、心を通わせた私と赤葦くんであったが『明日は絶対遊ぶんだい!』と駄々をこねたどっかの馬鹿が『昼飯食ったら駅前集合!どっちでも良いから来いな!』とアバウトすぎる指示を下して帰って行ってしまったので、すみません、アイツのことは無視していいんで、とふたりで苦笑いを交わしてその日は別れた。
そして一夜明けた今朝、ベッドの上で目覚めた私は考えた。世話係として行かねばならない。しかし心底面倒くさい。でも赤葦くんが来るなら行きたい。彼は来るだろうか。考える。もし仮に私が行かなかったらどうなるだろう?私が行かず、赤葦くんが来たら、行けばよかったと嘆くだろう。私が行かず、且つ赤葦くんも来なかったら?その場合は最悪だ。木兎がイジケて家に突撃してくる。あぁそれが一番面倒くさいな。
頭の中に2×2の表を描き、枠外の縦軸に私と彼、横軸に行く/行かないのマトリックスの図式を作る。暖かい布団の中で結論を弾き出すのにかかった時間は0.5秒。そんな訳で本日寒空の下、わざわざこうしてやって来たわけである。