第1章 まるでオーストラリアのサンタみたいに(赤葦京治)
話は昨日にさかのぼる
「なまえ!明日遊びに行くぞ!!」
部活終わり、冷たい夜風に凍えながら校門目指して歩いていたら、背後から木兎の声が飛んできた。げ、と一文字心に浮かんだ。
「おい、無視すんなよ!」
聞こえなかったフリをして歩きだそうとしたら「ありゃ無言の拒否だな」「フラれてやんの」とからかう声まで聞こえてくる。木兎1人じゃないのか、と舌打ちして振り返ればそこにはずらりと並んだバレー部員たち。それを見て、げげ、と声が出る。
「なまえ、明日遊ぼーぜ!」
180cm前後ある男子の集団。その威圧感の中央に立って、屈託のない笑顔を浮かべる幼馴染み。「ごめんなさい、生憎用事が」と微笑みを返すと「暇って言ってたじゃんかよ!彼氏と別れたからって!」という大声。途端に顔がひきつる。おい、なんでお前がそんなこと知ってるんだ。
「遊ぶなら私じゃなくて、チームの皆さんを誘ったらどうでしょう」
後で覚えてろよ、と静かな怒りを燃やしながら、色んな意味で同情の視線を向けてくるバレー部員たちに、ねぇ?と同意を求めた。さっ、と一斉に目を逸らされる。
「だってこいつらみんな嫌だって言うんだもん!!」
叫ぶ木兎。「遊ぶわけねぇだろ、せっかくの休みの日に」と本音を漏らしたのは3年3組木葉秋紀。
「休みは遊ぶためにある日だろ!」
「身体を休める日ですよ、木兎さん」
ゴネる木兎に、3年勢の後ろから見知らぬ男子が顔を出した。「というかこの人、木兎さんの彼女じゃなかったんですね」
「彼女?んなわけねーじゃん!」
こんなちんちくりん!と笑われた私は我慢できず正拳突きを繰り出した。ぐふっ、と地面に膝をつくミミズクヘッド。
そんな情けない主将には目もくれず、私を恋人と勘違いした彼は、へぇ、と言って私を見ていた。
知的な顔立ちにしたたかな目元。はっ!好みのタイプ!と思っていたら、初めまして、と頭を下げられた。あ、ご丁寧にどうも、とこちらもお辞儀を返す。
「そっか、お前ら初対面なのか」
深々と頭を下げ合う私たちを見て木葉が言った。
「マジ?じゃあ紹介しなきゃじゃん!」
びよん!と木兎が跳び起きて、手のひらを上向きに、私に右手を、そして育ちの良さそうな彼に左手の指先をそれぞれ向けて説明をした。