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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第6章 視点を変えて見てみよう【3.拡大】(青城3年)


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「し、死んでるのか、それ……?」


暗闇に支配された部室の中に、花巻の強張る声が落とされた。どういうことだよ、とうわ言のように続いた言葉に、俺を含め他の3人は誰も返事をしなかった。もっとも、1人はもう喋ることもできないのだけれど。


「なぁおい、どういうことだよ。黙ってねぇでなんか言えよ!」


声を荒らげる花巻に、しょうがなかったんだ、と岩泉が静かに答えた。俺と花巻に背を向けている岩泉の足元には、先程から全く動かない及川の身体が転がっている。


「しょうがなかった……って……」


肩で大きく息をしながら、花巻が絶句したように呟いた。「なんなんだよそれ。わけわかんねぇよ。だって岩泉、お前……」


「見られちまったんだよ!!」


クソッ!と岩泉が手に持っていたバットを床に叩きつけた。いやに軽い音を立てて転がったそれは、ひしゃげて変な形に曲がってしまっている。


「こうするしか他に方法がなかったんだ!俺は悪くねぇ!」


「ふっ…ざけんなよ!仲間を殺しておいて被害者ヅラか!?」


「やめろ、花巻」
激昂する花巻を、俺は腕を伸ばして制止した。「感情的になるな。一旦落ち着こう」


「離せ松川!!お前なんでそんなに冷静なんだよ!」

「冷静なわけない。俺だって焦ってる」

「離せよ……!離せっ!」

「待てって……おい!」


無理矢理腕を振りほどいた花巻が、岩泉の胸ぐらに掴みかかった。


「岩泉てめぇ!!そんな馬鹿な奴じゃなかっただろ!?ガキの頃からずっと一緒だった及川を……!なんで、なんでこんなことしたんだよ!?」


「………俺だって、こんなつもりじゃ……」

静かに身体を震わせながら、苦しそうな声で、でもしょうがないだろ、と岩泉が低く呻いた。それから、一瞬だけ俺の方を見た。「裏切り者は殺すしかねぇんだ」



俺は岩泉のその言葉が、花巻ではなく俺に向けて言ったのだということに気づいてしまった。

一度だけ息を大きく吸い込む。迷いはなかった。




視線は花巻の背中に向けたまま、ゆっくり身体を屈ませる。



息を潜めてほぼ手探りで、転がるバットに腕を伸ばした。



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