第39章 始まりは睫毛より上(花巻貴大)
「花巻くんさ」
「んー?」
「楽しい?」
「楽しい」
「っていうかなんで私の眉毛を選んだの」
「そりゃ、もちろん」手を止めずに花巻くんが答える。「一番やりがいがありそうだったから?」
そうか、そういう基準なのかこの人。
「もうバレー部の男どもはほとんど俺が手かけちゃったから相手いなくて」
やだ、なんかやらしいこと言ってるこの人。
「及川とか普段からマメだから全然やることなかったわ〜」
違うね、やらしいのは私の頭だね。
「だから、授業中に窓から風が吹き込んで、みょうじの前髪の毛先がふわって浮いたの見たとき『あーーーこいつだーーーーッ!』ってチョーうれしかった」
どうしよう、そういう目で見られてたとかチョー恥ずかしい。
「あとお前の趣味のアカウントは去年から知ってた」
「死にたい」
「誰にも教えてないから安心しろよな。あんま興味ねーし」
それはそれで悲しいところがあるけどさ。