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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第25章 スイッチはどこだ(木葉秋紀)




あ、無理無理無理これはやべーやつ。


足の長い身体を引きずるように、まるでゾンビのようにふらふらとこちらに向かってくる木葉。色素の薄い髪の隙間から見える額の青筋を目視確認。緊急避難警報発令。


いやこれは地雷踏んだよ赤葦。ってお前も実はやべー怒ってんのか。やばいのは巻き添え喰らってる俺か。俺か!


赤葦は開き直ったのか、その場に無言で立ち止まっていた。目の前でピタリと足を止めた木葉と、至近距離で対峙する。





「……なんなの、お前」怒ったときに、自嘲にも似た笑いを見せるのは木葉の癖だ。白い喉を反らして、身長の高い赤葦を見下げている。

木葉さん、と赤葦も返す。


「なまえさんのこと、もっと大事にしてあげてください」

「お前に指図される覚えはない」

「いいえ、あります。あんたそれでも恋人ですか?」


あああ赤葦の言うことはもっともだよな!でも正義という名の鉄槌を下さんとするその姿勢はもはや正義の暴力であってマジの部内暴力沙汰はマジでやばい!俺の語彙力もやばい!


俺は焦って、木葉の影に隠れているなまえを見やった。なまえは、真面目な顔で、俺に向かって、こっそりと手話のように超高速に手を動かして何か示してくる。


いやいやいや、わかんねぇから。

全く打ち合わせた記憶のないそのサイン。 なまえはこーゆー時にすぐふざけるから!マジで役に立たねぇっつーかぶっとばすぞ!!




「赤葦、気持ちはわかるけど落ち着け、な?」


一触即発の野郎2人のとばっちりなんざごめんだと後輩を宥めると「そーそー、非リアの僻みはみっともないぜ?」すかさず木葉が油を担いで乗ってくるので、「お前は黙っとけって!」と物理的に手で押し退けた。「聞けよ、赤葦」と後輩を見上げて早口で訴える。



「確かに木葉は口が悪ぃよ?性格が悪い。態度も悪い。信念ってもんが捻転宙返り起こしてんだよ。でもさ、それは性根が腐ってんじゃなくてほんとは臆病な生き物だからなわけ。わかる?実はなまえにベタ惚れの優しい男なの。全部照れ隠しなの!だから勘弁してやってって何言ってんだろうな俺ってキモい!?」


自分でも訳がわからなくなって木葉を振り返る。勢いに押されたのか、木葉が口の端を引きつらせてコクコクと頷いた。
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