第19章 まだネンネだもんね(日向翔陽)
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なまえさんと翔陽くんは、特別仲が良いというわけではありません。
「翔陽、」
「!?ぅえい!?」
「(ぅえい?)……どこいくつもり?」
「ど、どこって、部活デスケド」
「部活の前に、私たち今日、掃除当番だよ」
「あ」
けれど、掃除や実習のために分けられている"生活グループ"というものが一緒です。
「翔陽、もうちょっと、丁寧に掃いて」
「お、おう」
日向くんは、この掃除当番があまり好きではありません。
「机、列からずれてる」
「……ハイ」
整理整頓も苦手です。
「あとはゴミ捨てだね。じゃんけんじゃんけん」
いつも掃除当番の時は、さっさと終わらせて部活に行きたいとばかり思っていました。
「今日、結構ゴミある」
けれど、どうしてでしょう。
「……なまえ、2人で捨てに行こっか」
最近は、掃除の時間がもう少し長くてもいいかなと思っています。
「隣のクラスの小村さんて、うちのクラスの湊と付き合ってるんだって」
ゴミ箱を胸に抱えるようにして歩きながら、なまえさんが言います。
「ふーん」
こういう話題になると、日向くんはなんと言ったらいいかわからなくなります。
「早いよね。まだ入学して2ヶ月なのに」
「うーん」
日向くんは、ゴミ箱を2個持っています。
右手には、一番重い"不燃物"のゴミ箱を持っています。だって、男の子ですもの。
「そういえば今日は……でね、……」
「え?」
放課後の廊下は、生徒でごった返しています。がやがやしていて、うまく声が聞こえません。
「ごめん、聞こえない」
日向くんは、なまえさんに耳を近づけました。
「げし、なんだって!」
「あ、夏至」
「翔陽、夏至知ってるの?」
「知ってるよ!そんぐらい」
そうだね。6月21日は、夏至の日で、織田信長の死んだ日で、世界音楽の日だよね。
今日がどういう日なのか、一番よく知ってるのは、日向くんだもんね。