第9章 初めましては煩くなります
ふと、思い出した。
そういえば用品はどうしたのだろうかと。今自分は何も身に着けていないような気がして手探りで確認してみれば何もしていないようだった。
この時代は一体どうやって処理をしていたのだろうと女中を呼ぼうとした。だがそこで思いとどまる。きっと呼べば椿がくる、気まずいではないかと思い出しどうしようかと悩んでいるとちょうど誰かが部屋の前に通ったようで声をかけてみた。
「あの、すみません」
「様でございますか?」
どうやら椿以外の女中だったようで、失礼いたしますとふすまをあけて顔を出してくれた。見たことのない顔だなと思ったが、今はそんなことを気にしている場合ではない。こうしている間にも気持ちが悪い状況になっているのだ。
「その、えっとー、昨日の出来事のあれでして」
「…あぁっ承知いたしました」
そういってぱたぱたとどこかに消えて行ってしまうとすぐになにかを手に抱えてこちらに戻ってきた。
「どうぞ、こちらです。」
手渡されたのは綺麗な手拭いと綿のようなものだった。これをどう使うのだろうかと首をひねっていると、椿が滑り込んできた。
げっと思っていると椿はすぐに女中を下がらせての真正面に座った。
「さん、お手伝いします」
「いや、だ、大丈夫だよ」
そうはいうも全く使い方を知らないので唸っていると椿は用意ができたのかにこにこした様子でそのてぬぐいを構えていた。
嫌な予感はしたが一応聞いてみる。
「…どう使うの?」
「それはもう、突っ込むだけです」
あぁ、だからそんなに楽しそうなのかと思って椿からそれを取り上げて外に追い出した。そんなところまで手伝わせるなんて恥ずかしいことはしたくないと思ったのだ。
「出てって!大丈夫!できる!!!」
有無を言わさずすぐに廊下に出してはさっさと済ませた。
「っぁあああああ!!」
この叫び声の後、佐助が驚いた顔で部屋に入ってきた。