第8章 まさかくるとは思ってない
「幸村さん、気を遣わせてごめんなさい」
「某が勝手に申してるだけの事、気にしないでくだされ」
え?とはものすごい速さで幸村の顔をじっとみつめた。
勝手に申している、とは幸村が誰に言われることもなく、自分から考えを言っているのだろうか。それとも言わなくてもいいと言われていたことを喋ったということか。
「…ええと、その…?」
「某の考えに、ござる」
あぁ、そうなのか。幸村が気を使ってくれたのか、自らの意志で。
そう思えば自然とは申し訳ない気持ちとぽかぽかしたような気持ちで心を埋められた気分になった。笑みを零して幸村に言う。
「拾われたのがここでよかった、本当に、有難うございます」
「…!」
幸村も満面の笑みでに笑いかけた。
お互いのその笑顔はなんの偽りも不自然さもなく、美しも輝かしいものだった。
「旦那も成長したみたいでよかった」
「ですなぁ」
その様子を屋根裏にいた佐助と小山田は微笑ましげに見ていた。
「殿もやっと落ち着いた笑顔を見せてくれるようになりましたし、そろそろ…」
小山田がそう佐助に言うと苦笑いを零して首を振っていた。何をそんなに拒むのかと小山田は眉間にしわを寄せて問うが、何も答えることなく屋根裏を去って行ってしまった。
小山田もため息をついて屋根裏から静かに隣の部屋の方に移動して抜け出した。