• テキストサイズ

オンナナレさせてみせますから

第21章 目に見えた希望が




その頃は穴倉を抜け出し、見事逃亡を成功させた。
背後には屋敷がみえ、炎が見え隠れしている。恐らく未だ交戦中なのだろう。

「ごめん、なさいっ」

身を潜めながら先程幸村達がいたであろう方向へと走っていく。
足からは力が抜け、もうすでにどれだけ走り続けたかわからなかった。平成でこんなに走ったのは長距離走だけだった。まさかこんな状況に追い込まれて走らざるを得ないとは、と眉間に皺を寄せた。
一体、どうしてこんなことになってしまったんだろうと己に問い掛ける。そうして帰って来るのは『超えてはいけない壁を越えたから』というのだけ。

「こ、ここまで、くれば…ッ」

咳き込んで軽い荷物をおろし、木陰に身を隠した。

「は…はあ」

溜息をつき、少し焦げ臭い空気を吸うとまだここに生きているのだと感じさせられる。このにおいはきっと、の為にと戦ってくれている元親だ。
ありがとう、と心の中でもう一度呟いてから幸村達が陣を組んでいるであろう所へとゆっくり歩みを進める。ここまでくればもう焦る必要などないのだ。

「…!!」

気配に敏感になっていたは自分以外の人間がうろついているのに気が付く。幸村や佐助ではない、全く別の人物だ。此方の様子を伺っているようにも思える。まさか盗賊かと暗闇の方に目を凝らすとそれは本当に偶然過ぎて言葉も出ない程の嬉しくない再会だった。

「お、お前は」

「あの時の女じゃねえか!!」

それはトリップ初日に出会ってしまったあの盗賊たちだった。まさか生きているなんて、嫌何故ここにいるんだろうかと思考を巡らせてみるが答えなど出るはずもない。
ただ、今はここから逃げなければならないのだと考えて荷物をぎゅっと抱え込む。もう疲れ果てて立つのもやっとなのにどうすればいいんだとは不安そうに一歩下がった。



/ 185ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp