第9章 初めましては煩くなります
血生臭い(絶望)事件は無事おさまり、気が付けばもう8月下旬。
よく考えてみれば戦があると言って出陣するような様子もなかったし、そんなに政務が忙しそうなわけでもなく、ただ鍛錬をやり続けているような気がする幸村。
そんな彼を見てふと、は思った。欧州の独眼竜伊達政宗とは絡みがなさすぎるのではないかと。
この武田軍でも生活はとても楽しいし不便はない。だが新たな出会いが少なすぎて少々飽きていた。にとって非日常は必要であった。
「佐助さんっ佐助さーん」
「はいはいっと」
かなり打ち解けてきた2人。呼べばちゃんと来てくれるし困っていれば助言の一つや二つをしてくれる。良き友のような人になった。
「思ったんだけど、戦国ってこんなに平和なの?」
「なんで?」
「私がここに来てから一度も出陣をみてないなーって…」
そういうと佐助もそうだねぇと呑気そうに答えた。
アニメやゲームだとひっきりなしに戦があちこちで起こっているイメージでこんなに武将がのんびり暮らせている時間なんてないものだと思っていた。こんなに戦と戦の間が空いてしまうと体もなまってしまうのではないのだろうか。
まぁそのために鍛錬をしているのだろうが…。
「今は何処も動こうとしないよ」
「なんで?」
「そりゃ教えちゃダメでしょ」
へらっと笑って佐助もの横でぼーっとしていた。
きっとこんな時間も何れは戦でバタバタして消えちゃうんだろうなぁと寂しい思いもしたが、今は戦国の世だ。戦があって当たり前と思っていなければならない時代。
やはりには辛いのだろうか。
「あー…そうだ、近々客人が来るんだ」
「へぇ、どんな人?」
「西海の鬼、長曾我部元親」
は鼻息を荒くした。