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オンナナレさせてみせますから

第8章 まさかくるとは思ってない


見事に寝坊をした。といってもまだ日が少し出始めるときだったが。
残念ながらまだ桶や手拭いの準備はしておらず、さっさと着替えて準備をする。
ここだけの話、寝間着は現代の物を使わせてもらっている。といっても中学の時に使っていたハーフパンツと白いティーシャツなのだが。これが一番落ち着くのだと信玄に言うと考える間もなくよかろうと許してくれていたのだ。どうも胸元がはだけるのは苦手だと思っていた。

「はっ…あ。よかった」

まだ終わる気配もなく、幸村と小山田は打ち合っていた。
金属と金属がはじけるこの音はもう何度聞いたことか。最初のころは恐怖心も多少はあったのだが、今となってはそれも日常に溶け込んでしまい、むしろそれを聞かない日があれば不安に思うほどだった。



「有難うございました、幸村殿」

「いえ、こちらこそ」

と、お互いに挨拶しているところへは小走りに行き、2人に手拭いを渡した。
すると幸村が珍しく話題を振ってきた。

「殿、簪は…」

「あっ、つけてくるの忘れちゃいました」

気が付いて結い上げた髪を触れば、昨日買ってきた簪が付いていないことに気が付いた。そういえば急いで起きてきたためそんなちょこちょこやっている暇がなかったんだ。はそう説明すれば幸村は安堵の息を漏らす。

「忘れた…で、ござったか」

「え?あ、はい。ばたばたしてまして」

「某のせいでは、ないのか?」

上目づかいにそんな見られても、と内心バタンバタンと転がっていたがリアルでそれをやってしまったらひかれること間違いなしなので、目線をそらして肯定をした。
しかしその目線をずらすという行為が間違っていたらしく、誤解されてしまった。

「嘘を申さないでくだされ!昨日、某が不甲斐ないばかりにっ」

「嘘じゃないですって!忙しかっただけです寝坊したんです!」

「誠でござるか?!嘘はよくないでござる!!」

ああだこうだと言い合いを続けているが、小山田はどうやら止める気などさらさらないらしく、その様子を和やかな表情で見守っていた。




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