第8章 まさかくるとは思ってない
双方折れることなく息が荒くなるほどにまで言い合いをしていた。
どうも道場が騒がしいと信玄と佐助も様子を見に来たのだが、小山田が説明すると後から来た2人も呆れるような顔で笑っていた。
「いい加減に、してください…真田、さんっ」
「殿、こそ…っ!認めては、いかがかっ?!」
肩で大きく息を吸っては言葉を出し続け、息が続かなくなればまた深呼吸して言葉を並べ続ける。それはもう、男と女の言い争う出なく、ただお互いの主張を曲げることを知らない幼子が言い争いをしているようにしか見えなかった。
「も、いいです、…真田さん、」
「なんでござろう…っ」
幸村が顔を上げるとはその場にしゃがみ込んでいた。
何事かと幸村が立ち上がらせようとすると
「やめてください…っ」
と、泣きそうな声で訴えてきた。先程まで威勢が良かったのに、何故こんなにも弱弱しくなったのかがわからない幸村はただ混乱するばかりだった。
流石に佐助も様子がおかしいと思い、の横にしゃがみ込んで肩を叩いてみる。
「大丈夫?どうしたの?」
「や、ちょ、猿飛さん、あっちいってください」
来ちゃダメ、しっしっと扱いを乱暴にされた。だがそれは何故か覇気も何もなく、ただだるそうにうずくまってこちらに顔もむけなかった。
あしらわれたがそのまま立ち去るわけにはいかないので、仕方がなく心配そうにこちらを伺っている小山田と信玄を呼んだ。
人数が増えたのを察したのか、そのしゃがんだ体制を崩さぬままささささっとその輪から離れた。
「わっ気持ち悪っ」
「佐助」
「おっと失礼しました」
信玄に暴言を正され、佐助は大げさに口をふさいで見せた。
いつもならこれで何よ!と起き上ってくるのに、今日はますます調子は悪そうだし、ぴりぴりしている感じだった。