第7章 新生活も慣れれば日常
翌朝、は無事に起きることができた。
携帯のアラームを3:00に設定し、イヤホンを接続して耳にはめていたのだ。うるさいジリジリという音と共に目が覚めて慌てて布団を片付けて昨晩用意しておいた桶と新しいタオルを片手に抱えて着替えを済ませ腕まくりをして井戸の方へ駆けて行った。
ふと、後ろから視線を感じ振り向くとそこには佐助が突っ立っていた。
「朝早くからご苦労様」
「お互い様でしょう」
は水を汲みながら佐助に一言いうと一礼して立ち去ろうとした。すると佐助はを呼び止めて
「まだ鍛錬は始まってないよ、日が昇るのと同時に始まるの」
「…すみません、把握していませんでした」
佐助から情報を聞くのは悔しいがこの人からの情報が一番信用できるのは知ってるし、何とも言えずにとりあえず謝っておいた。
すると佐助は浅いため息をついた。
「ねぇ、もしかしなくとも俺様の事嫌いでしょ」
目を合わせてくれないよね、と。そりゃ佐助だから気が付くというより、あからさまに視線をぐっとずらして話しているのだ。
佐助のようにつかみどころのない人間は扱いにくいというか、なんというか話すのが苦手だった。まだ感情がはっきりしている幸村や小山田の方が好きだし、佐助のような取り繕うのが日常になっている人は嫌いだ。
「佐助さんも、私の事本当は嫌いなんでしょう」
「…好きでも嫌いでもないよ」
「それ、未来では嫌いって意味なんですよ」
はもう一度失礼しますと言って佐助の視界から早く消えたいと桶から水がこぼれないように慎重に、なおかつ早く道場のほうへ去って行った。
取り残された佐助は頭を抱えた。
「…これだから汚れてない子は苦手なんだ。」
佐助は幸村の鍛錬につかう槍を取りに行ってやろうとその場を後にした。