第6章 馴染むって決めたんです
しばらくは放心状態にあった。無意識に部屋に戻り、何も考えずに時間を過ごしていたのだ。
気が付けば外は暗くて、携帯を確認してみればもう6時を過ぎていた。
この時代なら夕飯は食べ終わっている時間だろうにこの館のなかは未だざわついていた。きっと今日が宴だからなのだろう。
何故か取り残されているような気分になり、不安に思ったは携帯を握りしめて廊下へ出た。
「…どうしよう」
またわけのわからない不安に襲われた。きっと小さいころに迷子になったときのあの感じに似ているのだろう。自分の居場所がわからなくて混乱して、結局何もできない己の未熟さに戸惑うアレだ。
どうしようもないのは分かっているし、いつここを追い出されるかもわからない。いつまでもここで安全に暮らせるとは思っていない、そう理解しているのに何も考えられないしアテもない。もう嫌だという気持ちが先ほどまで多少あった自身までをも蝕んでいく。
「殿」
「小山田、さん」
座り込んでいると小山田が優しく話しかけてくれた。
小山田に話しかけられると何故かとても安心する、それは恐らく小山田の雰囲気が父親に似ているからなのだろう。
「どうされましたか?顔色が優れませんが」
そう言いながら持ってきてくれたのだろう甘味をお茶と一緒に渡してくれた。横に座った小山田からは少しお酒の匂いがして、先ほどまで宴のさ中にいたことを思わせた。
きっとを心配してきてくれたのだろう。
「すみません、何でもないんです」
「何もないという感じには見えませんよ」
と、小山田は言うとを撫でた。
こうみると小山田はとても頼もしく見えるし、作中の中でのモブ感は全くない。どうしてこんな人がすぐに死んでしまったのだろうとは泣きたくなってしまった。
「そろそろ殿が呼ばれる頃です、身支度は椿がやってくれたのですね」
「…あ、はい」
どうやらが放心状態にあるときにすべて身支度は済ませてくれていたらしい。椿には申し訳ないが全く気が付かなかった。
「さあ、行きますよ」
小山田が差し出した手を握りしめて立ち上がった。