第6章 馴染むって決めたんです
小山田の後に続いて歩いていると真正面からふらふらとした足取りでこちらに向かってくる女性の姿が見えた。
「…つ、椿ちゃん?!」
「あ、じゃあないですかぁ!」
顔は真っ赤で酒のキツイにおいがする。恐らく飲まされていたのだろう。
「椿っ!」
小山田は椿の両肩を掴んでぐらぐらと揺らして怒るが全く聞いていないようだ。椿は幸せそうな可愛い笑顔を受けべながらそこに崩れ落ちた。
「申し訳ありません殿…」
「わ、私は大丈夫ですよ」
小山田は多分椿の失態について謝ったのだろうが、はそんな事よりこの酒の匂いをどうにかしてほしいと思っていた。
それはそうだ、この酒の匂いには全く免疫がない。現代では未成年者だし、両親はそこまで酒に強いわけでもないのでは顔をしかめた。
「椿は通りかかった他の女中にでも任せておけば大丈夫でしょう」
椿への扱いが雑な気もするがは苦笑いをするしかできなかった。
廊下の角にある柱に寄りかからせてその場を後にすることにした。
「殿、やはり不安ですか」
「え?」
「先程ぼうっとなされてたのは考え事でもなされていたのでしょう?粗方この後の暮らしについてで。」
どうやら小山田にはオミトオシだったみたいだ。は正直に頷いて小さな声で誤った。
こんなにも優しくしてもらっているのにまだ不安だなんてやはり贅沢ものだ。
「仕方ありません、先人の世は平和だったのでしょう?争いに慣れていないのは仕方ありません」
ほら付きましたよ、と部屋の前に立たされる。きっと転校生が教室に入る瞬間に似ているのではないだろうか。バクバクと心臓が鳴り、どうしようもない震えが止まらない。緊張しているというより怖いのだと思う。
「…大丈夫ですから、私がついてます」
勇気を振り絞ってふすまを開けた。