第18章 気持ちに嘘はつけません
が門番に挨拶をすると暫く固まっていた門番が
「おっ、お、おおおおお帰りなさいませ!!!!!」
と、戸惑いながらも挨拶をしてくれた。
はもし拒まれてしまったらどうしようかと不安に駆られていたが、そんな事は無駄な心配だったようだ。
門から館の入り口までの景色は何の変りもなく、池には美しい鯉が悠々と泳いでいるし、遠くの方からは兵が鍛錬している声がよく聞こえる。
何が違うかと言えば、その鍛錬兵が発する声の中から幸村のあの煩い声が全然聞こえてこないという事だけだ。
「こういう時はまず信玄様に挨拶するべきかな?」
「まぁそうだろうな」
慶次を見れば、懐かしいと思ってか目を細めて笑んでいた。
「どーこに、いーるのかな…」
「何其の歌」
「え?うーん…適当に作んない?もうおなじのは歌えないけどね」
うろうろしていると、向こう側に誰かがいるのに気が付き、慶次に言うと俺が見てくるよとを残してその人の気配がする方に向かっていった。
暫くボーっとしてまっていると、笑いをこらえながら此方に歩いてくる慶次の姿が見えたので思わず駆け寄って何がいたのかを聞いてみる。
「だ、誰かいたの?誰?」
「…っ、く、は、はははははッ!!行ってみりゃわかるさっ!」
声をかけた瞬間大笑いし始めたのでそんなに笑うほど面白いものがあったのかと慶次が覗いていたところに恐る恐る顔をのぞかせてみると、久々に見る赤い塊がそこに
「えっ塊?」
よく目を凝らしてみると幸村が膝を抱えて顔を、というか耳まで真っ赤にした赤い塊がそこにいた。