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俳優で幼馴染で初恋で。

第6章 私の過去


電話なんてできる状態じゃない私に変わって、蓮が電話を受けてくれる。
「蓮:…はい、分かりました。」
やがて受話器を置き、私に向かう。
「蓮:病院に運ばれたんだって。おじさん、病院に向かってるらしい。詩織、病院、行く…?」
『…っ、行く。』
事故に遭ったお母さんに会うのは少し怖い。でも、嫌だけど、もしかしたら、最期かもしれない。この時の私に、いかないという選択肢はなかった。

蓮に連れられ、バスを乗り継ぎ、着いたそこは、深杜総合病院。
ロビーには、お父さんが待っていた。
『おとう、さん、お母さんは、お母さんは…?』
「父:…。」
『お父さん…?』
「父:意識がなく、重体、だそうだ。」
『っ!!』
私は、声にならない悲鳴をあげた。
蓮は、黙ってお父さんの話を聞いている。
「父:今日、日を越せるかどうか、と…。」
『そんな…』
涙が溢れてくる。ロビーの床を濡らして、水たまりをつくっていく。
「父:入っていいそうだ。…行こう。蓮くんも、来たかったら、おいで。」
「蓮:…。」
蓮は行くとも行かないとも言わなかった。今考えると、たぶん、お世話になったから、行きたい。でも、家族の最期に家族じゃない俺がいてもいいのか、というところで迷っていたんだと思う。
私は蓮の手を握り、ついて来て、という意思表示をした。お父さん入るけれど、蓮がいた方が心強いから。
蓮は握り返してくれた。
私と蓮、お父さんで、母のいる病室へ。
そこには、たくさんの管に繋がれている母の姿があった。
「っ…」
母のベッドの淵まで行くと、堪えていたはずの涙はいつの間にか流れる。
「お母さん…、目を覚ましてよ…。今日は私の誕生日でしょ…?お祝いしてくれるんじゃないの…?ケーキ、サプライズなんじゃないの…?楽しみに、してたのに、こんなプレゼントいらないよ…。っ、ひぐっ、」
嗚咽を漏らしながら、私は涙を流し続ける。ベッドのシーツに跡ができていく。
お父さんも無言だけど、きっと内心悲しんでる。蓮も無言で、ただ私と母を見ていた。
その時、母の瞼が動いた。
「母:し、おり…?」
『!お母さん…っ』
意識が戻ったのだ。
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