第14章 流しに来ました
「・・避けられているとしたら、私かと」
ちょっと虐めすぎましたかね、気まずそうに伏せられた目に俺とイレイザーが同時に言葉を無くす、無音の会議室に空調の音だけが響いた
「・・追い詰めるような事言ったんですか」
「どうかな、彼女がどう受け取ったかは分かりませんが」
選んで欲しいと、その気持ちは伝えたつもりです、一瞬でピリついた部屋の空気、
深い溜息を吐いてぱさりと資料を閉じたイレイザーが背凭れに身体を預けるとその口角が僅かに上がった
「・・そういや土曜、結婚の話が出たな」
「はぁ!?」
「するなら俺と、そう伝えた」
「彼女は何て・・!」
「教えない」
黙ったままの塚内さんが暗い画面を睨み付ける、明らかに挑発目的のイレイザーの発言、軽く発された一発目が結婚の話だなんて相当の悪意がある
「・・とっとと打合せやりましょ」
「お前、終わったら行く気だろ」
「そのやり方は感心しないな」
揃って眉を顰めた二人に俺は態と涼しい顔を作る、開いたパソコンには山のような未読メールが表示されていて気が重くなった
「そもそも一番追い詰めてるのは君だろう、ホークス」
「そりゃもう、めちゃくちゃ焦ってるんで」
手料理も贈り物も全部俺だけがいいんです、あんたらの入る隙はひとつも作らせん、キーボードを叩きながらぶつぶつ呟くと塚内さんが小さく溜息を吐いた
「・・手料理、か」
「いいでしょ、あげませんよ」
「おい、贈り物って何だ」
「めちゃくちゃセンスいいやつです、教えませんけど」
にこやかに微笑んでEnterキーを押す、この後の予定についての再調整依頼を書き殴ったそれに今頃目良さんが頭を抱えているだろう
「・・イレイザー、場合によっては捕縛を」
「無個性相手に手荒だなぁ、大人って怖かぁ」
降参したように両手を上げると、穏やかとは程遠い物騒な視線が俺を刺す
何を守り何を繕ってんだか知らないが、俺はその一分一秒が惜しいんでね
「・・大人なお二人さんとは違って」
お子ちゃまは気楽でいいですよ、ペットボトルの蓋を開け喉に流し込んだ冷たい水、今夜俺は彼女の淹れる温かい紅茶を飲むと決めた
画面に表示された新着メール、思いのほか文句の少ない目良さんからの返信に、とうとう見放されたかと俺は数秒首を傾げた