第14章 流しに来ました
音を立てて思い切り閉めた車のドア、駐車場から校舎までの道のりが今日は酷く長く感じる
警備員に会釈しいつもの硝子戸を開けるとスリッパに履き替えている足が視界に入った
「・・塚内さん」
「ホークス、大丈夫か」
その顔、まともに寝ていないだろう、怪訝そうに俺を覗き込んだ彼がスリッパをもう一足床に出して、俺は軽く頭を下げる
「・・めぐさんの顔見てから会議室行くんで」
先行っとって下さい、呆気に取られている塚内さんを横目に俺は廊下を進む
広いフロアの突き当たりにあるその部屋、保健室の表示を念のため確認して数回ノックを響かせた
「めぐさん、居ます?」
言いながらドアを開けると、椅子の上に座るリカバリーガールと目が合って
治癒を受けている生徒が俺に向き直ると驚きに声を上げた
「ホークス!たまに来てるって本当だったんだ、」
「はは、ナイショね」
頼むよ、戯けたように口元に人差し指を当てると、やれやれと溜息を吐いたリカバリーガールが俺を睨み付けた
「アンタかい、うちのにちょっかい出して」
「ちょっかいて、人聞き悪いなぁ」
「残念だね、今日あの子は居ないよ」
全く、大の大人が寄ってたかって情けない、今日は帰らせたからね、シッシッと追い払うようにリカバリーガールが顔を顰めて俺は呆然と扉を閉める
電話も出ないし既読も付かない、
先ほどの塚内さんの振る舞いを見る限り、異変を感じているのは俺だけという事か
土曜の夜に結局我慢できず押した通話ボタン、話し中だと知らせる電子音がまだ耳に残っている
翌日の日曜だってオフだったはずなのに、まさかイレイザーとあのまま、
来たばかりの廊下を引き返して逆側の階段を登る、焦る気持ちのまま会議室のドアを開けるとすでに着席している二人が顔を上げた
「・・今日、めぐさんは」
「ああ、熱が出たらしいな」
「本当にそれだけですか」
「あ?何が言いたい」
嫌悪感を隠さない視線が俺を刺す、しかし何かを隠している様子は感じられない
「・・土曜の夜、ちゃんと帰しましたか」
「お前と一緒にするな」
不快だ、思い切り放たれた殺意にほっと安堵の息を吐く、力無く椅子に腰掛け項垂れると塚内さんが頬を掻きながら一瞬だけ視線を泳がせた