第26章 脹相〜脱いだシャツの行方〜
顔が熱い。
耳まで熱い。
あなたは何も気にしていない。
ただ感想を言っただけなのだろう。
それが分かっているからこそ。
余計に困る。
「……脹相?」
「ああ」
「大丈夫?」
「大丈夫だ」
「また顔赤いよ?」
「……暑いだけだ」
「今日はそんなに暑くないよ」
「……」
脹相は黙ってソファへ座った。
そして、あなたがいつものようにソファの前へ座るのを見届ける。
あなたは借りたシャツの袖をいじりながら、テレビを見始めた。
「……」
脹相はその後ろ姿を見る。
自分のシャツ。
自分の匂い。
自分の服を着て、何の疑いもなくくつろいでいるあなた。
付き合っているわけではない。
だからこそ。
こんなことで動揺している自分が、少し情けなく思えた。
「……」
それでも。
あなたが袖の余った部分を折りながら、
「これ、気に入った」
と笑った瞬間。
脹相の胸は、また大きく鳴った。
「……そうか」
表面上は、それだけ。
いつも通りの落ち着いた返事。
けれど内心では。
――もう、そのシャツを着ているところを見たくないとは、到底思えなかった。
むしろ。
自分の服を着ているあなたが、思った以上に嬉しくて。
それを悟られないようにすることで精一杯だった。