第2章 脹相〜一緒に住む?〜
数日が経つ。
私は脹相が家にいることにすっかり慣れていた。
「ただいまー」
「おかえり」
玄関を開ければ、脹相がいる。
それが当たり前になっていく。
「今日、遅かったな」
「ちょっと任務が長引いて」
「怪我は?」
「してないよ」
「……そうか」
毎回、最初に聞くのはそれだった。
そして私は、そんな脹相の優しさが少しずつ好きになっていた。
ある夜。
私はソファに座ってテレビを見ていた。
脹相は隣に座っている。
以前は少し離れていたのに、最近は自然と距離が近くなっていた。
「脹相」
「何だ」
「うちに来てよかった?」
「……」
脹相は黙った。
「急にどうした」
「いや。最初はどう思ってたのかなって」
「……嬉しかった」
「え?」
「……」
言ってしまった。
脹相は固まる。
私は目を丸くした。
「嬉しかったの?」
「……ああ」
「そんなに?」
「……お前が誘ってくれたことが」
小さな声だった。
私は胸が少しだけ熱くなる。
「そっか」
「……」
「じゃあ、これからもいてよ」
その言葉に、脹相がこちらを見る。
「……いいのか」
「うん」
「迷惑ではないのか」
「全然」
私は笑った。
「むしろ、脹相がいると安心する」
その瞬間。
脹相は完全に言葉を失った。
顔には出さない。
いつもの無表情。
けれど、耳だけが赤くなっている。
「……そうか」
それだけ答える。
そしてしばらくしてから、脹相はぽつりと言った。
「……俺も、お前がいると安心する」
その声は、とても優しかった。
まだ、恋人ではない。
好きだとも伝えていない。
それでも。
私が「うちに来れば?」と言ったあの日から。
脹相にとって、この家はただ眠る場所ではなくなっていた。
帰る場所になっていた。
そして、その場所に私がいることが。
何よりも嬉しかった。