第2章 脹相〜一緒に住む?〜
最初の日。
私は空いている部屋を案内した。
「ここ使っていいよ」
「ああ」
「必要なものがあったら言ってね」
「ああ」
「……なんか緊張してない?」
「していない」
「そう?」
「ああ」
即答だった。
でも、荷物を置いたあとも脹相は部屋からなかなか出てこない。
私は不思議に思いながらリビングへ戻った。
その数分後。
脹相は一人で部屋に座っていた。
「……」
手で顔を覆う。
――落ち着け。
ただ家に住むだけだ。
そう自分に言い聞かせる。
しかし。
廊下の向こうから私の声が聞こえるだけで、胸が妙に騒いだ。
その日の夕食。
「脹相、これ食べる?」
「ああ」
「美味しいよ」
「……お前が作ったのか」
「うん」
脹相の箸が止まった。
「……そうか」
「?」
ただ料理を作っただけなのに。
『お前が作った』という事実だけで、脹相には特別なものに思えた。
「……美味い」
「ほんと?」
「ああ」
「よかった」
嬉しそうに笑う私を見て、脹相は視線を落とした。
――まずい。
好きだ。
そう思った。
あまりにも自然に。
当たり前のように。
自分でも驚くほど、簡単に。
けれど、口には出せない。
まだ付き合っているわけでもない。
そもそも、私が彼を家に誘った理由だって、単純な親切心なのだろう。
それを勘違いしてはいけない。
そう思えば思うほど、少しだけ苦しくなった。