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呪術廻戦〜脹相〜

第22章 脹相〜うなじ〜


   
 夜。

 二人でソファに座っている。

 私はテレビを見ていた。

 脹相は隣にいる。

「眠い?」

「ああ」

 私がそう言うと。

 いつものように。

 脹相の手が頭に乗る。

 ゆっくり撫でる。

「……」

 私は目を閉じる。

「気持ちいい」

「そうか」

 脹相は何度も撫でる。

 けれど。

 ふと目を開けた私は。

「……」

 脹相が少し遠くを見るような顔をしていることに気づいた。

「脹相?」

「ああ」

「何か考えてる?」

「……少し」

「何?」

 脹相は答えない。

 ただ、私の髪を指先で整える。

「何でもない」

「またそれ」

 私は笑う。

 脹相も小さく笑った。

 ――本当は。

 何でもなくなんかない。

 あなたの後ろに立つと。

 あの日のことを思い出す。

 頬に触れた唇。

 驚いた顔。

 赤くなった頬。

 そして。

 今、無防備に自分の手に頭を預けているあなた。

 もっと近づきたいと思う。

 うなじに顔を寄せて。

 キスしたくなる。

 その衝動を。

 脹相は何度も飲み込む。

 まだ付き合っていないから。

 あなたが自分と同じ気持ちなのか分からないから。

 だから。

 今は触れるだけ。

 髪を撫でるだけ。

 頭に手を置くだけ。

「……」

 それでも。

 あなたが安心したように目を閉じるのを見ると。

 それでいいと思える。

 脹相は最後にもう一度だけ。

 あなたの髪を優しく撫でた。

「……おやすみ」

「ん……」

 小さな返事。

 脹相は微笑む。

 そして。

 誰にも聞こえないほど小さく呟いた。

「……いつか」

 その先は言わない。

 今はまだ。

 触れるだけでいい。

 その日が来るまで。

 脹相は自分の中にある衝動を、静かに抱えていた。
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