第22章 脹相〜うなじ〜
事故ではあったものの、頬にキスをして以降、あの日以来。
脹相は、私の後ろに立つことが増えた。
最初は偶然だと思っていた。
キッチンで私の後ろを通ったり。
本棚から本を取るときに、いつの間にか私の背後にいたり。
玄関で靴を履いていると、すぐ後ろに立っていたり。
けれど。
「……脹相?」
「ああ」
「何してるの?」
「別に」
そう答えるわりに。
なかなか動かない。
「……」
私が振り返ろうとすると。
「そのままでいい」
「え?」
「俺が後ろにいるだけだ」
「……変なの」
私は笑って、また前を向く。
脹相はその後ろ姿を見つめる。
特に気になってしまうのが。
髪の隙間から覗く、うなじだった。
「……」
本人は気づいていない。
脹相の視線が、そこへ吸い寄せられていることを。
長い髪を耳にかけたとき。
首を傾けたとき。
髪を結んだとき。
ほんの少し見える白い肌。
そのたびに、脹相は目を逸らそうとする。
けれど。
気づけばまた見てしまっている。