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呪術廻戦〜脹相〜

第21章 脹相〜頬へのキス〜


「これ」

「……似合うと思う」

「まだ写真しか見てないのに?」

「お前なら似合う」

「……」

 また顔が熱くなる。

「そういうこと、さらっと言うよね」

「何か変だったか?」

「変じゃないけど……」

 私は雑誌で顔を隠す。

「今日はもう恥ずかしい」

「……そうか」

 脹相は少しだけ笑った。

 そして。

「……」

 何気なく、自分の頬に触れる。

 さっき。

 あなたの唇が触れた場所。

「……」

 その仕草を私は見逃さなかった。

「脹相」

「ああ」

「今、頬触った?」

「……触っていない」

「触ってたよ」

「気のせいだ」

「ふふ」

 私は笑う。

「気にしてる?」

「……」

 脹相は答えない。

「もしかして、私より恥ずかしがってる?」

「それはない」

「ほんと?」

「ああ」

 けれど。

 耳はまだ赤い。

「……」

 私は少しだけ考える。

 そして。
「じゃあ、もう忘れよう」

「ああ」

「今のこと」

「ああ」

「なかったことにする」

「……」

 脹相が一瞬だけ黙った。

「分かった」

 そう答えたけれど。

 その声は、ほんの少しだけ残念そうだった。

「……」

 私はそれに気づかなかった。

 また雑誌へ視線を戻す。

「ねえ、この服どう思う?」

「ああ」

 脹相が覗き込む。

 今度はさっきより慎重に距離を取っている。

「これか?」

「うん」

「似合うと思う」

「じゃあ、今度見に行ってみようかな」

「ああ。一緒に行く」

「ほんと?」

「ああ」

 いつも通りの会話。

 いつも通りの距離。

 なのに。

 さっきのことだけは、二人とも完全には忘れられていなかった。

 脹相は雑誌を見るふりをしながら。

 自分の頬に残っているような、あの一瞬の感触を思い出していた。

 そして心の中で。

 ――事故でよかった。

 そう思う一方で。

 ――もう少しだけ、長くてもよかった。

 そんなことを考えてしまった自分に気づいて。

 脹相は静かに目を逸らした。

 まだ付き合っていない。

 だから、その気持ちは口にしない。

 ただ。

 あなたが隣で楽しそうに雑誌を眺めている。

 それだけで。

 脹相の頬には、しばらく消えない熱が残っていた。
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